10年位前から「無学年制」というキーワードを目にすることが増えてきたように思います。
お子様をお持ちのママやパパにとって子どもの教育と子どもの将来の幸せは大きな関心事ですよね。
今日は、子育てに関わるママやパパに「無学年制」というテーマを考えてみることで、何らかの子育てのヒントにつながれば幸いです。
この記事を読むことで、子どもが幸せでイキイキとした大人になるための教育とはどうあるべきなのかということを考えるキッカケになります。
こんな方におすすめ
- 無学年制という言葉にちょっと興味がある方
- なんとなく日本の教育に疑問をもっている方
- 学校の勉強がやらされ感だったと感じている大人
- 子どもの幸せと教育について興味のある方
- 幼児、小学生、中学生のお子様をお持ちのママ、パパ
Contents
学年制とは
学年制は約150年前に日本の公教育制度で始まった、大量の子どもたちに大量の知識技能を効率的に学ばせるために国がつくったシステムです。
このシステムを徹底的に極めることで日本は効率的に均一化された労働者を社会に供給することで成長してきました。
学年制の課題
学年制が社会にもたらした功績もさることながら、その裏で大きな問題も生み出してきました。
同年齢と過ごすことが多い集団は、同調圧力が働きやすくなります。
その同調圧力は悪いことばかりではないかも知れないが、異質な存在を排除しようとする大きな問題を引き起こしています。
実は、この同調圧力が強くなることで様々な事象の要因になっている可能性がある。
- いじめの温床
- 空気を読まなければならない居心地の悪さ
- それらに事象よるストレス
- 学校になじめず不登校
- 周りに合わせよう、周りを気にするあまりに本来の良さを失う
また、学年制に付随する「留年」という仕組みが非常に非効率である。
学年制の場合は1年間で取らなければならない単位数が決められています。
その単位を落としてしまうと落とした単位だけではなく、その学年の取得すべき単位をすべて再履修しなくてはならないのが留年である。
もっとも学習効率の高い時期に、このすべて再履修という無駄な時間を過ごさせるお仕置き的な仕組みになっていると言えます。
留年したくないなら、勉強しろという圧力が作られやすくなる。
そして、勉強は楽しいものから強制させられるものへと変化する。
この留年問題は主に高等学校での問題であるが、留年がない小学校や中学校の学年制にはもっと大きな問題があります。
留学がない小学校、中学校では本来義務教育として理解しておかなければならない知識技能があります。
学年制で留年がないと言うことは、習得しなくてはならない知識技能を習得しなくても時が来れば卒業できてしまうという実は非常に大きな問題を抱えているのです。
「義務教育」という言葉がありますが、これは憲法や教育基本法や学校教育法で定義されています。
憲法では、保護者は子どもに普通教育を受けさせる義務を負う。(日本国憲法26条第2項)
学校教育法では、市町村は必要な小学校、中学校を設置しなければならない(学校教育法29条)となっています。
義務教育の義務は、保護者と自治体に課せられています。
子どもたちは教育を受ける義務ではなく、教育を受ける権利者です。
この趣旨から、義務教育期間に習得すべき知識技能を習得できていない場合は習得できるように教育を受ける権利が子どもたちにあると言えます。
しかし学年制では構造的にその年の内容を習得できていなくても均一的に学習をすすめるため、時間が経過すれば次の学年の学習内容へ進んでいきます。
その結果、特に算数などの知識の積み上げを前提とする学習において授業についていけなくなる生徒を生んでしまっている。
そのようなことにならないように、多くの現場の先生方は補習したり努力をしていることは忘れてはならない。
ポイント
- 学年制は時代の要請で社会的に効果的であった時代もあった。
- その一方で多くの教育を受ける側には様々な課題を生み出してきた。
- 高等学校の学年制に付随する留年という仕組みは非常に無駄なお仕置きに近い制度である。
- 実は基本的に留年がない小・中学校で学習内容を理解していなくても進んでしまうという大きな問題を引き起こしやすい制度である。
無学年制
前項までは「学年制」の問題点について触れました。
では、それらの問題を解決した制度についてお話をします。
それが「無学年制」です。
その代表的な仕組みが「単位制」です。
単位制とは
通信制の高校や一部の高校で導入されている制度です。
取得した単位は翌年度も残すことができるため、落とした単位のみ再履修することになる制度です。
具体的には、学校教育法で定められている「必須科目を含む74単位以上を取得する」条件を3年間在籍して満たせば卒業できる制度です。
3年以上かかっても問題はありません。
大学で単位をとって卒業するのと同じですね。
学年に関係なく単位を取得していくことができるので、自分のペースで学習をすすめたい方には非常に向いている制度です。
「学年制」と比較すると明らかに自主性が求められるとともに自由度の高い制度なので、条件下ではあるが自分の好きな分野を伸ばしたいという場合には効果的な仕組みです。
変化の兆し
単位制高校の増加
単位制高校は通信制高校がメインであったが、実は全日制高校、定時制高校でも導入されています。
全日制課程において単位制が可能になったのは平成5年からです。
文科省のHPで確認すると平成28年度で1,007校で前年より33校増加というデータもあります。
この流れは少しずつ進んでいます。
習熟度別クラス
学年制の小・中学校での問題点について触れましたが、小・中学校学校も手をこまねいているわけではありません。
小・中学校でも習熟度別の教育をすることで本来学ぶべき知識技能をきちんと学べるようにしようとする動きがあります。
例えば東京都では都の教育委員会で、小学校の算数、中学校の数学、中学校の英語において効果的な習熟度別指導を実施するためにガイドラインを発行しています。
リンク:東京都教育委員会 東京方式 習熟度別指導ガイドライン、少人数・習熟度別指導ガイドライン
算数や数学、英語などの積み上げ型の科目が対象であるところもポイントです。
無学年制学習教材
無学年制の学習教材が非常に注目を浴びています。
伸びている2つの理由があるようです。
先取り学習としての効果と学習が遅れているところの学びなおし。
学年という縛りがないための効果を期待している保護者の思いが見えます。
ここでは特に評判がよい2つのサービスを紹介しておきます。
RISU算数/RISUきっず
タブレットを利用したオンライン算数教材です。
お子様の学習データを分析し、1人1人の「ちょうどいい」レベルに教材が自動に変化するので、 「苦手」を取り残さない。
「無学年制」が特長で、75%以上のお子様が学年より上のステージを先取りしています。
お子様が自尊心を育みながら、学習習慣を身につけられる新しい教材です。
幼児用のRISUきっずと小学生用のRISU算数があり、ともにお試しサービスがある。
参考小学生の親は必見! RISU算数がもたらす効果とこどもの将来
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無学年式オンライン教材すらら
【勉強のプロ】が認める教材が家庭学習サービスとして利用できる。
全国学習塾1,000校、学校1,000校が採用、33万人の生徒が利用中。
- 無学年式でどこまでも戻れる、どこまでも進める
- 教師役で登場するのはアニメのキャラクター。勉強に苦手意識があるお子さまにも好評。
- オンラインならではの最先端AIドリル機能搭載。子どもの学習に応じて自動的に難易度をコントロール、つまずきの原因を特定し学び直す問題を出題。
- 学習塾の現役の先生を中心にカウンセラーなども在籍し保護者をサポート
-
参考無学年式教材『すらら』を3分で理解する【料金も機能も丸わかり】
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リカレント教育
リカレント教育とは、生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返す教育制度のことです。
学問を修めて仕事についても、必要と感じたタイミングで学びなおしたり、新しい知識を身に着けるという生涯学習の一つです。
社会人で受講したい人が受講する講座なので、当然、学年という概念はありません。
ただし、日本と欧米ではスタイルが異なります。
欧米ではフルタイムで就学と就労と繰り返すことが推奨されていますが、日本ではキャリアを中断して学びなおすという考え方は根付いていません。
私もこの5年ほど、会社帰りに大学の社会人公開講座を必要と興味に応じて幾つか受講しました。
私が受講した講座はアドラー心理学、統計学、行動心理学、データ分析などでしたが、受講者は20代から70代まで多種多様なバックグラウンドをお持ちの方でした。
同調圧力など一切ありません。
【都内で公開講座を実施ている大学の例(通信講座もあり、卒業生でなくても受講できます)】
今の学年制の状況で具体的に注意したいこと
変化の兆しは出てきていますが、現状は小中学校は学年制です。
習熟度が低くてもどんどん学年はあがりますし、同調圧力が高まりやすい環境です。
そこで次の3点を心がけましょう。
① 小学校では習熟度が低い科目を作らない
小学生の場合は習熟度の低い科目作らないことが大切です。
小学生で習うことは家で言えば基礎になります。
基礎が弱い家は途中で傾いたり、地震で倒れやすかったりします。
特に積み上げ学習の傾向が高い算数の習熟度は注視ましょう。
他の教科と比較してつまづきポイントによって差が開きやすいためです。
また、結果としての習熟度とともにこの時期に学習に対する考え方を前向きにしておければベストです。
勉強って楽しいって思ってもらえれば大成功でしょう。
② 多様性の受け入れられるような環境を!
みんなと同じとか、他人の目を気にすぎるなど、その後の人生でも大きく影響しそうな点は小学生時代に開放しておくとその後の人生が楽になるでしょう。
多様性を認めることを習慣づけさせることが大切です。
そのためには学年を超えた幅広い年代の人とのコミュニティへの参加が有効です。
例えば、スポーツ系の習い事でいろんな学年の子たちと過ごすとか、地域のコミュニティに参加して地域の大人とも交流をもったりするのもよいでしょう。
また、これからの日本を考えると外国人との交流もあるとよいでしょう。
地域によってはかなり多くの外国人のお子さまが同級生にいたりしますし、オンライン英会話などで普通にコミュニケーションを取っておくのも有効です。
子どもとのコミュニケーションで注意したいのが、ついついやってしまいがちな「他者と比較」や「ふつうは○○だ」というお話。
これは意識して抑えるようにしましょう。
実は保護者自体が多様性を認めることが子どもの多様性を認める力を育むのに一番効果があります。
もし多様性を認めないものの見方をしていると自覚している方は、まずは自分からちょっと意識して変えて一歩行動に移すようにしてみましょう。
③ 自主性を育む
無学年制への流れを踏まえて、無学年制の特徴から子どもたちには自主性を育んでおく必要性が高まってきます。
自主性とは、自らの意思で選択や行動するやる気や行動力のことである。
自主性がない子どもの特徴
- 「嫌だ」と言えない。
- 「何でもいい」「わからない」と答えることが多い。
自分の意思が弱いか意思を押し込めてしまっている可能性がある。
また、答えは人が与えてくれるものという思考パターンが身についている可能性があります。
高圧的な躾をしているとこうなる傾向があるようです。
実は自分も多少そういうところがありました。
父親は結構厳格な人であったため、それに従うことが思考パターンになっていたのかも知れません。
もし今までうまくできていなかったとしても、これから徐々に変えて行けば大丈夫です。
自主性の育み方
- 束縛を少なくして自分の力で物事に取り組ませる
- たとえ失敗しても時間がかかってもできる限り任せるようにする(安全な範囲で)
- やることにすぐに口出しはしないで見届ける
- なるべく自分で考えさせる、自分で選ばせる
- 子どもの興味を肯定し、その興味対象に興味をもってみる
モンテッソーリ教育では「子供には自分自身で育てる力が備わっている」という自発的な学びを尊重する考え方があるようです。
もしかしたら、もともと持っている自主性を過干渉になることで奪い取っているのかも知れませんね。
植松努さんの言葉を思い出しましたので、最後にここでご紹介します。
「教育とは、死に至らせない失敗を安全に経験させるためのもの」
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あとがき
教育は長期的な視点が不可欠です。
私たち大人が学んだものは数十年前の教育です。
実はここでリカレント教育を紹介したのは理由があります。
学習の将来的な姿のヒントがここにあるのではないかと思っています。
急速な技術革新や市場の変化が起きている変化の激しい時代です。
パソコンのOSがアップデートを繰り返すように、私たちも必要な知識や考え方などをアップデートして行かなくてはなりません。
私たちは教育を受けてきた時に考えられていた将来必要とされるであろう教育内容を受けてきています。
変化の激しい時代にそれが的外れになることもあります。
リベラルアーツのような人間が自由であるための基本となる素養や人間の社会性を高める道徳教育などはしっかりと押さえた上で、時代に必要な知識をアップデートしていくことが大切です。
私たち大人もずっと学び続けることになります。
子どもたちの学習環境もまた変化していきます。
教育分野におけるAIの活用です。
一部の学習塾や私立学校では導入が開始されています。
このITの進化は、「多少問題があっても集団として効率的な方法」から「個別の問題点を見つけ出して底上げを図る方法」への進化をもたらしています。
教育は国の将来の経済、科学技術、文化、軍事、政治などに大きく影響します。
今後ITの進展とAIにより教育界、教育産業に破壊的な変化が起きる可能性もあります。
無学年制のみならず、今後の教育制度が人々の生涯の幸福につながっていくものにより進化していくことを願っています。