ローテンブルク

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【ドイツ男一人旅物語】11話 想像と妄想の境目で(ドイツロマン派のストーリー)

 

今日のBGMです。

 

 

【ドイツ男一人旅物語】11話 想像と妄想の境目で

しげるが目覚めたとき、同室のイタリア人やイギリス人はまだ寝ていた。

前回のストーリー【ドイツ男一人旅物語】10話 ローテンブルク(ドイツロマン派のストーリー)

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昨日は少し早めに寝たせいか、ちょっと早く起きてしまったようだ。

時計を確認する。

まだ6時前である。しかし、カーテン越しの窓の外は十分明るかった。

2日目のローテンブルク。

ちょっと早めではあったが、6時から朝食は食堂で取れるので、顔を洗ってユースホステルの前に出て朝の空気を体に取り込んだ。

朝の気温は心地よく清々しい気分にさせてくれた。鳥の鳴き声が、しげるに声をかけているように聞こえた。

「そこの男、おはようさん」鳥A。

「今日も楽しく行こうぜ」鳥B。

「お前、かっこいいな。モテるだろ!」鳥C。

「キャー、素敵! 抱きしめて!」鳥D。

これらは、すべてしげるが妄想した鳥からの掛け声である。

しげるは爽やかな朝にも拘らず、ヨダレさんが垂れていた。

そんなしげるのアホっぷりを、ローテンブルクの朝は優しく受け入れてくれていたのだ。

ふと気が付くと、城壁側の方にベンチが2つ並んでいる。

その片方に、20代前半とお見受けする女性が、しげるをじっと見ながら座っていた。

ドキッとした。まぢで。

日本人ではないことはわかったが、どこの国の人かはこの時のしげるにはわからなかった。

色が白くサラサラのロングの金髪に青いお目目。

お人形さんみたいだ。めちゃくちゃキレイだ。

しげるがドキッとするのは、自分もわかる。

目が合って、向こうから、軽くお辞儀をしてくれた。

しげるも何かしないといけないと焦って、警察官のような敬礼をした。(おい、しげる!)

そして、「Guten Morgen!」と大きな声で言ってみた。

「Morgen」とニコッと笑って返してくれた。

嬉しくなったしげるは、欽ちゃん走りで彼女へ近づいた。

実に奇妙な光景である。

しかし、しげるの心境は「今日は朝からいいぞ!」である。

「ベンチに座って何をしているんですか」しげるがドイツ語で聞いてみた。

「早く起きたから朝の空気を吸おうっと思って出てきたの」かわいい。

「あ、一緒です。ぼくはしげる、よろしく」と手を差し出してみた。

「わたしはエレン」と握手をしてくれた。

白いワンピースのエレンは、いい香りがした

(ということを後にしげるから聞いた)

エレンは、ドイツの東部の街のドレスデンから一人旅でローテンブルクに来ていて、同じようにユースホステル(Jugendherberge)に泊っているとのこと。

朝食を一緒にとることになり、ふたりで食堂に向かった。

ドイツのユースホステルの朝食はだいたい数種類のドイツパンと数種類のハム、ソーセージ、チーズ、サラダとフルーツと飲み物(牛乳、コーヒー、ジュース)のブッフェというスタイルが多い。

 

ちなみにエレンのイメージはティモテのCMに出てくるこんな感じの女性です。

※1984年当時のCMはインパクトが強く、男子小学生が歌いながらCMに出演していた金髪女性の真似をするという遊びが流行った。

ティモテについて詳しく知りたい方はこちら

 

そんなエレンなので、しげるはとっても幸せなブレックファーストを楽しんでいるわけで。

「もしかしてエリーゼの言ったいた人ってエレンなのかなぁ」と思ってしまってるしげるである。

しげるは特に今日の予定を考えていなかった。自由な旅人である。

「エレン?ドイツでおすすめの街はどこ?」しげるの頬がほんのり紅い。

「一番はドレスデンよ。ベルリンも刺激的だし、ニュルンベルクやミュンヒェンもいいわよ。」目をキラキラさせて話すエレン。いい香りがする。

「ドレスデンかぁ。あのフラウエン教会がある街だよね。行ってみたいなぁ。」しげる、ちょっと鼻の穴が大きくなっている。

「ぜひ、来てみて! シゲはいつ日本に帰るの?」エレンがうっとりした瞳で聞いてくるではないか! しかも。いい香りがする。

「5日後の夕方だよ。それまでは、自由にドイツを旅する予定。とくに予定は決めていなんだ。」しげる、自由をアピールする。

「そう、じゃあ、シゲ?一緒にドレスデンまで行く?」エレン、積極的! 相変わらずいい香りだ。

「ええ!いいの?」ちょっと興奮して心拍数が上昇中のしげる。

「わたし、今日はローテンブルクをゆっくり楽しみたいので、明日、一緒にドレスデンに向かいましょう!」いい香りが言った。

「うん、そうしよう!」しげるの回答速度は、マッハ2を超えていた。

「ドレスデンでは、私のうちに泊って、シゲに料理をごちそうするわ。」鼻血が出ないよう細心の注意を払って息をするしげる。

しげるとエレンは、明日朝8時にチェックアウトしてユースホステルの前で会うことを約束して、食堂を出てそれぞれの部屋に戻った。

部屋にもどったしげるは興奮を抑えようと、モンティホール問題を解き始めた。

多少の興奮は収まったものの、あのいい香りの残り香で幸福感は満たされていた。

ドレスデンという街について、しげるはフラウエン教会のことしかほぼ知らなかったため、ネットで調べようとタブレットでネットサーフィンを始めた。

しげるがネットでドレスデンを調べていると、なぜか広告が「タケモトピアノ」ばかり出てくるのだ。

そんなに「タケモトピアノ」検索したことないのに…。

ドレスデンのだいたいの地図や見どころ

  • フラウエン教会
  • ゼンパーオーパー
  • アルテマイスター絵画館
  • ドレスデン城
  • ツヴィンガー宮殿

を頭に叩き込んだ。

これで大丈夫ということで、身支度をしてローテンブルクの街に繰り出した。

午前中ということで、閑散としていた。

30分ほど街中を散歩して、ちょっと一休みしたいと思い、ブルク公園で腰を掛けて空を見上げてみた。

水色とコバルトブルーの中間色といえるようなきれいな青空が広がっていた。

「エレンはどうしてあんなに美しいのだろう」ボソッと言った。

しげるは病にかかったようだ。恋の病。

「エレンは今、何しているのかなぁ。」重症化してきている。

「エレン、マイラーヴ、ソー スィート」『いとしのエリー』をエレンに変えて歌い始めた。

見ているこっちが恥かしくなってきた。

そして、エレンのことを妄想し続けるしげるの脳のミトコンドリアはオーバーヒートした。

そして、いわゆる睡眠状態に突入した。

「シゲ、美味しい?」エレン

「うん、すごく美味しい、こんな美味しいの初めてだよ。」しげる

「あ、恥ずかしいわぁ」

「もう、我慢できないよ、エレン」

「あ~、もっとぉ、シゲ、カモン!」

あのいい香りがする。

しげるは目が覚めた。そして、すんごいいい夢を見ていたことに気が付いた。

と同時になんか濡れていた。

ほぼ変態である。いや、生理現象であり、健康体のしげるだ。

そう表現してあげたいのだ。

「どんな夢見ていたのかしら?」エレンが公園のベンチの隣に座ってしげるをまじまじと見ていた。

「ああ、エレン。そこにいたとは。ちょっと昼寝しちゃって・・・」寝汗をかいているしげる。

「なんかいやらしい顔して寝てたわよ」と悪戯っぽい顔して聞くエレン。

たしかにしげるは、いやらしい顔をして寝ていた。それは私も実際に目にした。

いやらしい顔をして公園で昼寝をする男、しげる。

「ねぇ、シゲ、午後、市庁舎の塔にの登ろうと思うんだけど、一緒にどう?」エレンが誘ってきた。

「はい、喜んで!」居酒屋か!っていうぐらい元気よく答えるしげる。

「ありがとう、しげ。街全体が見渡せるからいいよって言われたんだけど、高いところがちょっと苦手なので、シゲが一緒に行ってくれると嬉しいわ」

街の中心にある市庁舎に突っ立っている塔。

それはしげるにとっては、ある部位の象徴としてしか考えられなかった。

それを一緒に登ろうということは。。。

空想が加速して妄想となり、妄想が暴走して変態と化した漢(おとこ)、しげる。

エレンの美しさといい香りが、しげるの妄想の触媒となり化学反応は加速する。

これが恋のサイエンス。

自然現象である。

エレンは1回、ユースホステルにもどって着替えるというので、午後2時に市庁舎の前で約束をして公園をあとにした。

しげるはユースホステルに戻るエレンの後ろ姿を見つめた後、急に腕立て伏せ30回と走り込みを始めた。

ベンチに座っている老夫婦がしげるの行動を微笑ましく見ている。

体力を使ったしげるは、落ち着きを取り戻して、街へと戻った。

市庁舎の近くのカフェに入って、軽くランチを摂った。

まだ2時までは時間がある。いつもカバンに本を入れているしげるは、そっと本を取り出して、

時間まで読書をすることにした。

取り出し本は『影響力の武器〔第三版〕』。

世界的ベストセラーであり、アメリカの社会心理学者が書いた本である。

6つの心理トリガーについて書かれた本であり、多くのビジネスマンや詐欺師が活用しているテクニックが説明されている。

これを読むと商売や詐欺師が、「この手を使っているな」ということがわかるので、騙されにくくなります。

心理トリガーの1つである返報性の心理トリガーについて、

無料メルマガを登録させて情報提供し、高額な情報商材などの販売する手口などがその例である。

そんな本をしげるは東京で会った髭の仙人に紹介されて、この旅で読もうと決めていたのだ。

 

おっと、もう午後1時45分だ。

Zahlen bitte(ツァーレンビッテ)

と担当のウエイトレスさんに言うと、レシートの入ったケースを渡される。

10%程度のチップを上乗せして挟んでおけばOKである。

市庁舎の前には5分前には着いて、エレンの姿を探した。

さすが、時間にパンクチュアルな日本人である。

エレンは、ドイツ人らしく午後2時ちょうどに現れた。

なんとまたまた素敵な格好だ。

ノースリーブの丈の短いワンピースで肌の露出が多い。

これは、しげるの心を大きく揺さぶった。

「どう?ちょっと動きやすい格好に着替えてきたんだ」とエレン。

「ああ、すごい素敵だ。ドキドキするよ。」と平静さを保ちつつ答えるしげる。

「じゃあ、早速行きましょう!」と軽快なエレン。

「ああ、楽しみだよ。」大人の風格を出そうと演じるしげる。

市庁舎は非常に古い建物で、塔に上がるには入場料を払って

とにかく狭い階段をどんどん上がるしかない。

エレンを先に行かせ、そのあとをしげるが付いていく形になった。

狭い階段で、しかも丈の短いワンピースのエレン。

見えそうで見えないギリギリのところでエレンのきれいな白い脚が目の前にある。

しげるは鼻血が垂れていることに気が付かずにいた。

塔の上についた時、しげるの顔は、鼻血で血だらけになっていた。

(つづく)

ローテンブルク3
つづきのストーリー【ドイツ男一人旅物語】12話 白いブラウスと鼻血(ドイツロマン派のストーリー)

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